東宝、新中計「アニメ」中核 6年で作品数倍増
【東京本局 = 東証】(プライム、コード9602、連結)東宝は14日、26年2月期(今期)の連結純利益が前期比13%減の375億円になりそうだと発表した。QUICKコンセンサス(9社)の476億円を大きく下回り、減益となる。売上高は同4%減の3000億円、営業利益は同11%減の570億円になる見通しだ。それぞれQUICKコンセンサス(9社)を6%、18%下回る。年間配当85円とし、中間・期末それぞれ42円50銭を計画する。
あわせて、28年2月期を最終年度とする新中期経営計画を発表した。今後3年間を「成長投資と変革を継続する期間」と位置付け、注力するIP(知的財産)創出に対し累計700億円を投下すると強調した。最終年度にはグループ営業利益700億円以上を目指し、ROEは足元の9%水準を維持する。QUICKコンセンサス(5社)の772億円を1割下回るほか、ROE(4社)も0.55ポイント下回る。
前中計では800億円以上のM&A(合併・買収)やキャリア採用を進めた。2期連続で営業最高益を更新したほか、アニメ事業の売上高比率を9%台から17%台後半へと高めた。新中計では、M&Aや映画館出店などの成長投資額を1200億円(除くIP創出)に設定し、IP事業の成長を加速させると表明した。キャリアを持つ高度人材の採用にも引き続き取り組む。コンテンツ・IPや海外展開に詳しい人材を起用し、今後3年間で140名程度のキャリア採用を実施する構えだ。新卒は60名程度に抑え、「少数精鋭から精鋭多数」に転換する。
海外展開を見据えた実写作品の展開を重点に置き、自社製作の映画作品を年間10本程度に増強する。前期に756億円だった映画の興行収入を1000億円程度まで積み増したい考えだ。
今期からは近年業績成長が著しいTOHO animationをセグメントとして独立させ、透明性の向上を図る。最終年度には25年2月期(前期)比2倍規模の営業利益を創出する事業へと育てる。今後6年間で配給作品数を倍増させ、年平均32作品を目標にスタジオ増強を図る。
海外展開では「TOHO International」を中核として、売上比率を現状の3倍となる30%をメドとして販促に注力する。デジタル事業では新たな会員制サービス「TOHO-ONE」の開発に50億円投資する。26年春にもサービスを始める。会員限定特典として、TOHOシネマズの無料鑑賞やTOHOスタジオ特別ツアー、アニメ限定グッズ、演劇イベントなどを盛り込む。
グループ売上高の4割(前期ベース)を占める不動産事業では、既存物件の賃貸価格引き上げを進めるほか、保有意義の少ない物件については売却も選択肢として採算を改善する。
配当は年間85円を下限とする目安を新設。配当性向も従来計画から5%引き上げ、35%程度とする。26年2月期(今期)の配当性向は38%程度となる。
同時に発表した25年2月期(前期)の連結決算は、純利益が前の期比4%減の433億円だった。会社計画を3割上回る水準だったが、QUICKコンセンサス(9社)の443億円は下回った。売上高は1割増の3131億円、営業利益は9%増の646億円だった。
発行済み株式総数の5.63%に当たる1049万株の自社株を30日に消却することも発表した。
