EV大手テスラ、日産への出資検討 菅元首相ら支援
【米国本局 = シリコンバレー・東京本局 = 東証】テスラが日産自動車への戦略的出資を検討していることが21日、わかった。複数の関係者の情報をもとに、英有力紙のFinancial Timesが報じた。元テスラ取締役の水野弘道氏が主導し、菅義偉元首相や泉宏達元首相補佐官らが支援する。米国での生産能力確保を目指すテスラと、経営再建中の日産の思惑が一致する可能性がある。
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テスラを中心とした出資連合をつくり、複数の企業が参画する案が有力だ。日産の米国工場はテネシー州とミシシッピ州の2ヶ所で、年間生産能力は合計約100万台規模。ただ海外での販売不振の煽りを受けて足元の生産台数は年間52.5万台にとどまっており、能力を持て余している。一方のテスラはトランプ米大統領が掲げる関税引き上げの影響を回避するため、米国内での生産能力確保を急いでいる。日産への出資を通じた工場の確保を模索している。
ただ日産側はこの案に後ろ向きと見られる。北米地域は前期(24年3月期)の販売の4割を占める主要市場で、工場売却は業績回復の足かせになる可能性があるためだ。
日産は昨年12月からホンダと持ち株会社を作り両社がぶら下がる形での経営統合を進めていたが、今月に決裂していた。計画頓挫を受け、以前から買収に関心を示していた台湾の鴻海(ホンハイ)が水面下で動きを活発化している。
政府内には中国と距離が近い鴻海に日産が渡り、サプライチェーンが中国側に握られることに危機感がある。水野氏らの構想では、台湾の鴻海は小規模な出資者として参画することを想定しているようだ。
日産は昨年、事業再生計画を発表した。世界での生産能力を2割削減し、9000人の人員削減を進めている。ただリストラ計画は遅々として進まず、ホンダとの買収計画が頓挫する原因になった。
一方、時価総額約1.1兆ドルのテスラは、これまで自動車メーカーへの出資には消極的だった。イーロン・マスクCEOは、360億ドルの手元資金を自動運転技術やロボット開発に振り向ける方針を示している。
報道を受けて日産自動車は一時、前日比53円90銭(12.86%)高の473円まで上昇した。