公取委、生成AI市場の実態調査に着手 巨大ITの寡占を懸念
【米国本局 = シリコンバレー・東京本局 = テクノロジー】公正取引委員会は2日、生成AI(人工知能)関連市場の実態調査に着手すると発表した。半導体チップやデータ、生成AIモデル、AIを活用したサービスなど、各分野で一部企業による寡占状態が形成されつつあることを踏まえ、新規参入の障壁や競争環境に問題が生じていないか検証する。
生成AI市場は急速な発展を遂げており、米NVIDIAやOpenAI、Google等の技術力と豊富なデータを有する企業が各分野で優位性を確立しつつある。公取委は、こうした状況下で公正な競争が阻害される懸念を表明する狙いがある。市場の独占や寡占が固定化する前の実態把握が急務だ。
今回の調査開始に際し、公取委は「生成AIを巡る競争」と題したディスカッションペーパーを公表。競争政策上の論点として、①取引やデータアクセスの制限・他社排除、②自社優遇、③抱き合わせ販売、④協調的価格設定、⑤企業連携を通じた人材の囲い込み、の5点を挙げた。11月22日を期限として、IT企業やAIユーザーなど幅広い関係者から意見を募る。
公取委の動きは、欧米各国の競争当局による一連の調査と軌を一にする。米司法省はNVIDIAの半導体市場における独占的地位について調査を進めており、米連邦取引委員会(FTC)は今年1月、OpenAIを含む大手5社に投資・提携に関する情報開示を求めた。英国でも同様の観点から調査が進行中だ。
日本では先日、富士通がOpenAIの「GPT-4o」を超える日本語能力を持つ生成AIを開発したと発表した。サイバーエージェントやNTTなども独自の生成AIモデルの開発に躍起になっていて、競争環境の維持は喫緊の課題となっている。
公取委は今回の調査について、現時点で特定の結論を想定したものではないとしつつ、調査結果を踏まえ「必要に応じて独占禁止法・競争政策上の考え方を示す」との方針を表明した。技術革新のスピードが速く、市場構造が流動的な生成AI分野で、公正な競争環境を確保するための新たな監督のあり方を模索する動きとなる。