Appleの「AI」、Googleのデータセンターを使用
【東京総合 = テクノロジー】米国の大手IT企業AppleとGoogleの意外な協力関係が明らかになった。Appleが発表した人工知能機能の開発に、ライバル企業であるGoogleのデータセンターが利用されていたことが、分かった。Business Insiderが報じた。
Appleは10日(米国時間)、年次開発者会議「WWDC」で、iPhoneなどのデバイスに搭載する新たなAI機能「Apple Intelligence」を発表した。「ChatGPT」を提供するOpenAIとの連携も発表し、ユーザー体験の向上を図る方針を示した。
ところが関係者によると、Apple Intelligenceの開発には、Googleのデータセンターが利用されているという。Googleの「TPU」と呼ばれるAI向けのチップを提供する同社のクラウドサービスを通じ、データの処理が行われているもようだ。
Appleの技術文書によると、Apple Intelligenceの基盤となるモデルの訓練には「TPUやクラウド、オンプレミスのGPUを含む様々なハードウェアとクラウドプラットフォーム」が使用されたという。つまり、GoogleのTPUを含む複数のプラットフォームを組み合わせて開発が進められていたことになる。
Appleは2024年4月、新機能の開発に必要なTPUの提供をGoogleに要請。Googleは社内での技術的問題の発生で納期に間に合わない可能性もあったが、長時間の作業を経て、何とかAppleの要求に応えたという。
GoogleのクラウドサービスにとってAppleは重要な顧客だ。GoogleがAppleのために割いているデータセンターのリソースは膨大で、社内では「ビッグフット(雪男)」というニックネームで呼ばれているほどだ。
今回の協力関係は、AppleがAIの分野で出遅れていることの裏返しでもある。高度なAIの開発には莫大なエネルギーを消費するデータセンターが欠かせないが、MicrosoftやGoogle、Amazonなどと比べ、Appleはこの分野への投資が不十分だった。
AppleがOpenAIと組んだのも、自前のチャットボットでは太刀打ちできないためだ。OpenAIにとっても、iPhoneというプラットフォームを手に入れられるのは大きなメリットになる。
Appleは今後、GoogleのAI「Gemini」をiOS端末に搭載する交渉も進めているとみられる。AIをめぐって各社が覇権を争う中、ライバル同士の「共存」も新たな潮流となりつつある。