米上院、TikTok禁止法案を可決 中国ByteDanceに米事業売却を要求
【米国総局 = ニューヨーク】米連邦議会上院は23日、中国発の動画共有アプリTikTokの利用禁止につながる法案を含む、総額953億ドル(約14.7兆円)の緊急予算案を賛成多数で可決した。法案はバイデン大統領の署名を経て、週内にも成立する見通しだ。
TikTok禁止法案は、運営会社である中国のByteDanceに対し、最長1年以内に米国事業を売却するよう求めるものだ。期限内に売却が実現しない場合、米国内でのTikTokのサービス提供が禁じられることになる。TikTok禁止法案が連邦議会の上下両院を通過するのは今回が初めてで、中国側の強い反発は必至とみられる。
TikTokをめぐっては、ユーザーデータが中国政府に渡る可能性があるとの懸念から、米国の安全保障上のリスクが指摘されてきた。トランプ前大統領は在任中、TikTokの使用禁止を試みた。しかし、TikTok側のロビー活動や、「Metaを利することになる」などといった主張から方針を転換したため、頓挫していた。バイデン政権下で再び禁止の動きが加速し、今回の法案可決に至った。
- 中国ByteDanceに対し、TikTokの米国事業を9ヶ月以内に売却するよう要求
- 売却が実現しない場合、米国内でのTikTokのサービス提供を禁止
- 売却先のメドが立っていれば、大統領承認のもと90日間の猶予期間延長が1回のみ可能
- 法律に従わない場合、ユーザー数に応じて最大5000ドルの制裁金を課す
- 約8500億ドル(単純計算で日本円にして約130兆円)
- 売却期限に間に合わない場合も、ユーザー数に最大500ドルの制裁金
- 約850億ドル(単純計算で13兆円)
- 売却までの猶予期間は当初案の半年から最長1年に延長
法案によれば、期限内に売却が実現しなければ、米国でのTikTokのサービス提供が禁止される。また、法律に従わない場合には、ユーザー数に最大5000ドルをかけた額の制裁金が科されることになっており、米国の1億7000万人の利用者数から単純計算すると、制裁金は8500億ドル、日本円にして130兆円を超える可能性がある。万が一、売却が期限に間に合わなくても、ユーザー数に最大500ドルをかけた制裁金(約850億ドル、日本円にして13兆円)が課される。
猶予期間は原則9カ月だが、売却先のメドが立っている状態であれば、大統領の承認のもと90日間の期間延長を1回のみ行うことができる。
TikTokは米国の若者を中心に絶大な人気を誇る。巨大プラットフォームの売却には兆円単位の費用がかかるとみられ、たとえ猶予期間が延長されたとしても、買い手探しや契約交渉は難航することが予想される。
英フィナンシャル・タイムズ紙によると、共和党の大口献金者であるJeff Yass氏の投資会社Susquehanna International Groupは、ByteDanceの約15%を保有しており、その価値は400億ドルに上ると見積もられている。Yass氏はTikTok存続に向けて政治的に働きかけを行ってきたが、米中対立の中では個人の力は限られていると専門家は指摘する。TikTok禁止によりYass氏の資産は打撃を受ける可能性がある。
可決された緊急予算案には、TikTok禁止法案以外にも、ウクライナやイスラエル、台湾への支援が盛り込まれている。ロシアの侵略が続くウクライナ支援には608億ドル(約9.4兆円)が充てられ、深刻な弾薬不足に陥るウクライナに対し、米国は法案成立後速やかに弾薬や防空兵器の供与を開始する方針だ。
イスラエル関連の支援には264億ドルが拠出され、パレスチナ自治区ガザ地区への人道支援にも90億ドル以上が割り当てられた。台湾を中心にインド太平洋地域の同盟国支援にも81億ドルが計上され、中国への抑止力強化が図られる。
今回の法案には、支援に慎重な共和党議員の理解を得るため、ウクライナ支援の一部を融資に切り替えたり、ロシア制裁で凍結された資産を支援に活用したりする内容も盛り込まれた。超党派での可決となったものの、与野党間の駆け引きは続いている。