Apple、Epic Gamesの独自ストア開設を阻止 FortniteのiOS版振り出しに
namiten.jp〈土曜版〉(金曜掲載)
【東京総合 = エンターテインメント(ゲーム)】Appleは日本時間7日までに、Epic Gamesの開発者アカウントを即時停止した。Epic GamesがEU域内で提供することを計画していたApp Store外の独自ストア開設を事実上阻止したことになる。Appleの方針に対する2社間の衝突が原因と見られ、2020年ごろにApp Storeから削除されたFortniteアプリの復活目処が振り出しに戻った。
EUで施行されたデジタル市場法
Epicは令和2年(2020年)、自社で開発するTPSゲーム「Fortnite」に、無断で外部の支払いシステムを導入した。AppStoreやGoogle Playで課金された場合に科される30%の手数料を免れようとした。規約に違反するとしてAppStoreからFortniteが削除されると、これがApple vs Epicの訴訟争いに発展し、話題になった。
この訴訟などを踏まえて、この4年間でEUの規制当局がGAFAMを中心とした巨大テック企業への締め付けを強化した。その一環として整備されたのがデジタル市場法(DMA)だ。現時点で6社22サービスを対象に、市場の寡占状態を緩和するための措置を強制する。例えば、標準のWebブラウザを初回起動時に選択できるようにしたり、自社サービス間のデータ共有の同意などがある。違反したと欧州委員会に判断された場合、全世界売上の20%が制裁金として科されることがある。
AppleはDMAの施行を前に、外部ストアの導入を一部条件を提示した上で許可すると発表していた。AppStoreを介さない支払いシステムの導入を容認し、一定のダウンロード数を超えなければ手数料はほとんどとられない。
Epic側としてはこのシステムを導入することで、事実上プレイすることが不可能だった、Apple端末にFortniteアプリを復活させることを検討していた。しかし今回、Apple側がこれを拒否したことで、計画は振り出しに戻った。
Apple側「繰り返される中傷を受けて総合的に判断」
Epic Gamesが6日、自社のホームページ上に公開したプレスリリースで明らかにした。Apple側は度重なるEpicによる中傷がガイドラインに違反するとしてデベロッパーアカウントを削除したと説明している。デベロッパーアカウントがなければ、7日から施行されるEUのデジタル市場法を受けて導入されたiOSの「外部アプリストア」のシステムを利用することができない。
Appleは「契約上の義務に対する重大な違反により、いつでも登録を停止できる権利があると裁判所は判断している。Epicによる行動を総合的に考慮した結果、その権利を行使するほか、選択肢はなかった」と取材に答えた。
外部ストアに科せられる手数料
Apple側が導入した外部アプリストアの規約では、100万ダウンロードを超えるアプリにはダウンロード数に応じて一定の手数料を徴収すると発表していた。
Epicのティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)は「アップルが関わらない配信に手数料を課すのはおかしい」とSNSに投稿しており、こうした反応が登録停止につながったと6日付のプレスリリースで分析した。
さらにプレスリリースには「Appleは真の競争を認めるつもりは端(はな)からなく、登録停止はDMAへの重大な違反だ」と規制当局へ通報する可能性を示した。「Epicは、Appleに反抗するとどうなるかを他の開発者へ脅すための見せしめにされた」と主張した。
「Apple が独自の裁量でサードパーティを追い出す権限を持ち続ければ、いつでも永久に切り離される可能性がある。そんなサービスを開発者は利用しようとは思わないでしょう」として、規制を巧みにすり抜けようとする大手テック企業にはDMAがなんの効果もなく終わってしまう危機感を記した。最終的にはEU規制当局の判断を煽ることになる。
Appleは先日にEUから2900億円の制裁金を科されていた。自社のサービス「Apple Music」の利用者数を促進するため、SpotifyをAppStoreのおすすめに表示しなかったり通知しなかったりしたという。
Appleは2900億円の制裁金について「Spotifyは我々から無償で受け取れるだけのものを受け取っておいて、1ユーロも払わず、さらに多くのものを望んでいる。私たちはEUを尊重するが、事実はそれを正しいと示していない(関係者)」として上訴する方針を固めている。AppStoreをめぐる各社の駆け引きが続いている。