Apple、AI開発に資金集中 EVの28年発売断念
【東京総合 = テクノロジー】Appleが開発中の電気自動車(EV)「Apple Car」について、同社が28日までに計画を一時凍結していたことが関係者への取材で分かった。令和10年(2028年)の発売が予想されていたが、近年の生成AIをめぐる競争で遅れを取ってる同社は、人材や資金を集中させたいと見られる。
米BloombergがApple従業員の話として現地時間27日、報じた。同プロジェクトを担当する部門で働く従業員に、ジェフ・ウィリアムズ最高執行責任者(COO)が伝えたという。相次ぐトラブルなどで開発が遅れてきた社内プロジェクト「タイタン」の28年までの発売目標を凍結し、数百人規模のレイオフ(一時解雇)を行う。
Apple Carは、プロジェクト内だけでもおよそ2000人の人材を抱えるが、車内システムの開発などに携わってきたほとんどのエンジニアは生成AI部門への異動で雇用を維持する。
EVをとり巻く環境は不安定だ。トランプ前大統領が次期大統領選で当選すれば、補助金の大幅抑制が行われると見られる。タイヤの消耗や、電気不足などの課題が浮き彫りになり、一部のレンタカー会社は一斉売却に踏み切っている。採算悪化なども追い打ちをかけ、電気自動車の開発・販売で米国1位のテスラは、株価が今年に入って2割下落している。米国の巨大企業を指す「壮大な7銘柄(マグニフィセント・セブン)」の中で下げが突出している。生成AIブームを支え、一年で純利益が約9倍、株価が5倍弱に成長したNVIDIAとは対照的だ。
Vision Proと同様に「一大プロジェクト」と位置付けられてきたApple Carの開発中断は、EV離れの流れを加速させる。今回の報道を受け、Apple株が上昇(反発)したほか、テスラのイーロン・マスクCEOが、「🫡🚬」の絵文字をX(旧Twitter)に投稿した。
生成AIブームに乗り遅れた結果、足元ではMicrosoftに時価総額で抜き返されるなど、Appleに対する注目度は下がり始めていた。「政争の具」として、その時々の政府の施策に影響されるEVを捨て、生成AIの開発に注力する判断を下した。
生成AI市場は入れ替わりが激しい一方で、これまでの経験値やユーザーからのフィードバックが重要な開発材料になる。GoogleやOpenAIは2010年代から生成AI基盤の開発に取り組んできた一方で、Appleは性能の高いテキストAIを提供していない。Vision Proの投入時にMRゴーグルのブームが過ぎ去っていたように、Appleの努力が水の泡になる懸念は拭えない。