ドル建て名目GDP 日本、ドイツに抜かれ世界4位に転落 IMF
国際通貨基金(IMF)は23日、ドル建て名目GDPで、日本がドイツに抜かれ世界4位に転落する見通しであると発表した。
名目GDPはモノやサービスの価格変動を考慮した指標で、その国の経済活動の水準を示す。価格変動を考慮しない実質GDPと比べ、家計と近く、実感しやすい特徴がある。
IMFが23日までに発表した経済見通しによると、今年の名目GDPは、いずれもドル建てで、日本が前年と比べ0.2%減の4兆2308億ドル(約634兆円相当、内閣府公表(円建て)は590兆円)、ドイツ8.4%増の4兆4298億ドルで、日本が4位に転落する見込みとなった。なお、1位の米国は5.8%増の26兆9496億ドル、2位の中国は1.0%減の17兆7009億ドル見通しだ。
ドル建てGDPは自国通貨安やインフレの影響を受けやすい。日本の4位転落も日本円の急落や、世界と比較してインフレ率が低かったことは無視できない。日本円が1ドル = 150円まで円安が進行しているのに対し、ユーロは日本円ほど下落していないことやドイツが高インフレを記録するなどの材料が重なった。
日本とドイツ、各自国通貨でみた成長率では日本が+2.0%なのに対し、ドイツは▲0.5%だ。通貨安などの材料を除けば実際には抜かれていないとの見方もある。
ただ、長期的に見ると日本の成長停滞は鮮明だ。日本円が急騰していた2011-2012年にはIMF予測の名目GDPで6兆ドルの大台に乗せていた。さらに日本の人口は1.2億人超なのに対しドイツは8千万人程度にとどまる。どちらも近年、成長が停滞する先進国だが、少子化やデフレが深刻な日本経済の脆弱さを改めて示した。
当時世界2位だった1990年と名目GDPの規模を比較すると、日本が1.3倍と微増だが、米国は3.1倍と大きな差がある。当時1.8倍だったGDP差は6.3倍にまで開いた。
(赤色が日本)
日本経済新聞によると、それぞれの00年からの名目GDPの伸びを自国通貨建てに直すと、中国が12.6倍と突出する一方で日本は1.1倍にとどまる。伸びはドイツの1.9倍や米国の2.6倍を大幅に下回る。物価変動を除いた実質GDPでみても日本の伸びは1.2倍と米独よりやや低い。
今年およそ30年ぶりの賃上げ率に乗せた日本は、物価上昇と賃金上昇の継続的なスパイラルに繋げられるかが焦点だ。足元の物価上昇に賃上げは追いつけておらず、実質賃金はマイナスが続く。実際、設備投資などで押し上げられた4~6月期の名目GDP速報値は、年率換算で+11.4%だったが、GDPに最も影響を与える個人消費は▲0.5%と弱い。
経済力はその国の影響力に直結する。世界全体のGDPに占める日本の割合は1/6から1/20まで沈んだ。さらに、これから中国を含め多くの国が低成長率時代へ突入する。一歩先に突入した日本は、他国に解決の糸筋を示す役割を担っている。さまざまな面からも、「強い日本経済」を取り戻すことは急務だ。