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届かぬタバコに店舗悲鳴 システム障害で欠品続出

namiten

【東京本局 = 社会】全国各地のコンビニやスーパーでタバコの品切れが相次いでいる。タバコの流通で99%を握る卸元のTSネットワークで14日、システム障害が発生し、タバコの納品が全国的に遅れているからだ。配送の遅延は日に日に悪化しており、直近の発注分は納品が4日後倒しになる。

店頭に掲出されたタバコの品切れを伝えるポップ
店頭に掲出されたタバコの品切れを伝えるポップ

「全体の1割が欠品状態。明日届かなければ、大半が品切れるだろう」。タバコの売上が全体の7割強を占めるというコンビニの店主はこう語る。障害が発生したのは14日よる。国内のタバコ流通で99.9%を握る日本たばこ産業(JT)子会社の「TSネットワーク」が実施した物流システムの更改作業でトラブルがあり、タバコを仕分けるシステムが動かなくなった。

復旧に向けた作業を続けているが、19日時点でもシステムは依然としてダウンしたままだ。システム障害が発生した当初の遅配日数は1日だったが、直近の発注分は仕分け作業が渋滞し足元では4日ほどに拡大している。24時間営業でない時短店舗では、さらに配送がずれ込むこともあるという。

公式声明が出たのは障害発生から3日が経った17日。コンビニ店主は対応の遅さにいらだちを隠せない。「過去に発注した分がいつ届くかわからない状況では、下手に注文を出せない。窓口の電話もパンクしており、まともな案内が届かない」と悲鳴をあげる。TSネットワークは来週以降、物流網の復旧と安定化を図るというが「一気に届いても店舗の整理負担が増すだけだ。どのような形になるのかだけでも教えてほしい」と店主は語る。

JTが声明を発表したのは障害が発生して3日目の17日だった。
JTが声明を発表したのは障害が発生して3日目の17日だった。

大手コンビニチェーン関係者によれば、「常連客の大半はタバコ目当て。定番のタバコが品切れになることで来店客の減少も考えられる」と危機感を示す。

SNS上ではタバコの品切れを訴える消費者の声も。「久しぶりに緑のマルボロを買った。いつもはキャメルを買っているが、メンソール系で残っているのがこれだけだと言われて渋々」とこぼすのは神奈川県在住の60代男性。「店員に聞いても『いつ復旧するのかわからない』と言われた。新しいタバコを探す機会とポジティブに捉えたい」と苦笑いを見せた。

物流の専門家は「昨今のDX化の流れで、各企業が基幹システムの刷新を急いでいるが、十分な検証なしに移行するリスクが浮き彫りになった」と指摘する。最近、NEXCO中日本のETC障害をはじめ市場を独占するプレイヤーでシステム障害が相次いでいる。社会インフラを担う企業のシステム移行には慎重さが求められる。

TSネットワークは1963年、東京たばこ配送株式会社として設立し、その後全国に拠点を拡大してきた。1985年のタバコ流通が自由化された後も、全国に流通網を持つ唯一の卸売業者として君臨してきた。直近の市場シェアは99.9%を占め、24年12月期(前期)の連結売上高は前の期比1%減の526億円。シェアの独占は国が現状を把握しやすいメリットがある一方、今回のようなシステム障害で全国で流通がマヒする現状も浮かび上がった。

もっとも、今からの新規参入は「不可能」との見方が大半だ。海外各地からタバコを取り寄せ小売店に配送する。タバコの卸売には財務大臣の認可が必要で、物理的な流通網の確保や制度自体の参入障壁と市場縮小を踏まえれば新たな単一プレイヤーの登場は見込めない。TSネットワークには再発防止策の導入が強く求められる。

小売各社は在庫状況を確認しつつ対応に追われる中、流通業界からは「タバコという単一商品で全国の物流が混乱する状況は健全とはいえない。ドライバー不足も踏まえ、リスク分散の観点からも卸売の登録が必要な流通制度の見直し時期がようやく到来したのではないか」との声が聞かれた。

今年はタバコ民営化40年の節目。コンビニ店主は「そもそもタバコを売って入ってくる収入は10%。喫煙者の減少やセルフレジの導入といった時代の流れも相まって、今後タバコの販売を終了する店舗は増えるのではないか」と語る。時代遅れの制度を常に点検し、柔軟な制度設計が不可欠になる。

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