米投資ファンド3社の経営陣、保有株の時価8兆円増 株価上昇で資産膨らむ
【米国本局 = シリコンバレー】米投資ファンド大手3社の経営幹部が保有する株式の価値が膨らんでいる。経営幹部が保有する株式は概算で、年初来約560億ドル(約8兆円)増加した。背景には投資ファンド関連銘柄の株価上昇がある。ここ1年でS&P500への投資ファンド関連銘柄の採用が進み、投資家層が拡大した。運用資産の拡大も追い風となった。経営幹部らの資産規模は足元で創業以来、最高水準に達する。25年は新政権下で規制緩和が進む可能性もあり、買収実施の拡大が見込まれる。
英有力紙フィナンシャル・タイムズが27日報じた。世界最大手の投資ファンド、米ブラックストーンは時価総額は年初から50%増え、2140億ドルとなった。経営幹部全体の株式資産は135億ドル増加した。23年9月にはファンド大手として初めてS&P500の構成銘柄に採用された。同社の運用資産は1兆ドルを突破し、シュワーツマンCEOの持株は110億ドル以上増えた。グレー社長やバラッタ投資部門責任者、チェー財務責任者(CFO)の保有株も時価が一時10億ドルを超えた。アナリストの間では、富裕層向けの不動産やクレジット投資商品の手数料収入が25年の収益を押し上げるとの見方が強い。
KKRは1年で株価が9割上がった。大手3社では上昇率が最も高く、共同創業者のクラビス、ロバーツ両氏の保有株はそれぞれ120億ドルを超える。同社は12カ月間で1200億ドルの資金調達を実施しを、21年秋に就任したナットール、ベー両CEOの下で株価は過去3年で平均年30%上昇した。両氏の保有株は計27億ドル近くに達した。6月にS&P500に採用されたことを追い風に、投資家の裾野が拡大している。
24年12月にS&P500入りしたアポロも株価を9割伸ばし、21年に退任したブラック、ハリス両氏ら創業メンバーの資産も大きく増えた。21年春に買収した保険会社アテネでCEOを務めるベラルディ氏の保有株は10億ドル超に達し、17年の昇進時に大規模な株式報酬を受けたクラインマン、ゼルター両共同社長も各5億ドル超を保有する。両氏はローワン氏の財務長官就任案が浮上した際の後継候補だった。
クレジット部門副責任者のジト氏や投資部門のノード、サンバー両氏への報酬として23年9月に付与された制限付き株式は、1年余りで5.5億ドルから10億ドル規模に膨らんだ。ただ足元では、クラインマン氏ら一部経営陣が株式売却の意向を示している。
アレス、TPG、アウルも株価が50〜65%上昇し、経営陣の保有株価値も各40億ドル超増えた。上位7社の経営陣は配当収入を24年に総額30億ドル(4730億円)を受け取った。株高と高配当で、ファンド業界トップの資産は一段と拡大している。