中国IT大手、米国でAI人材を積極採用 米政府規制下でも開発拠点拡大
【米国本局 = シリコンバレー・東京本局 = テクノロジー】中国の有力IT企業が、米政府による対中規制が強化される中でもカリフォルニア州にAI開発拠点を相次いで設置している。アリババ、ByteDance、美団(Meituan)が、OpenAIなど米国の主要IT企業からAI人材を引き抜いていることが、19日分かった。生成AIの開発競争で遅れを取り戻す狙いがあると見られる。
米商務省は1月、国内のクラウドサービス事業者に対しAIモデルの学習利用者の身元確認と報告を義務付ける新規制案を提示している。ただ新規制は中国企業の米国法人が国内のデータセンターを通じて高性能AI向けチップを使用することを制限していない。中国企業はこの抜け道を利用し開発拠点の米国シフトを急いでいる。
中国製生成AIの性能は飛躍的に向上している。日本経済新聞が13日に発表した日本語環境での性能を測る「AI Model Scoreランキング」ではアリババの「Qwen 2.5」が4位にランクインした。前回9月ので7位だった1世代前の「Qwen 2」からスコアを伸ばした。xAIが開発した「Grok-2」(6位)やGoogleの「Gemini 1.5 Pro」(14位)を上回った。
中国製AIの課題は学習データの不足だ。学習に使えるデータが中国国内のものに限られており、英語の学習データが欧米系の生成AIより少ない。出遅れているのが論文などの高度な分野の学習だ。世界の自然科学系の論文は約9割が英語で執筆されている。社会科学の分野でも7割に上り、中国国内だけのデータでは十分な学習が行えない。実際中国製AIは論理的思考や推論、数学分野の性能で欧米製に見劣りしている。中国国内ではアクセスできない高度な学習セットにも、米国拠点からならアクセスできる。
アリババはサンフランシスコ近郊のサニーベールでAI研究者やエンジニアの採用を強化した。同社の採用担当者が採用候補に上がっているAI技術者と直接面接し採用可否を判断する。独禁法や安全保障の指摘から逃れるため現地法人として分社化する。ロビー活動を行う人材採用も強化する。
ByteDanceは傘下のTikTokにAI機能実装するプロジェクトを米国で立ち上げた。大規模言語モデル「豆包(Doubao)」の開発チームとあわせてカリフォルニアに拠点を設置する。美団も新設したAIチーム「GN06」を通じ、メニュー翻訳機能やAIアシスタントの開発に着手している。