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Googleがサードパーティークッキー廃止方針を撤回 ユーザーの選択重視へ転換

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【東京本局 = テクノロジー】米Googleは、ウェブサイトをまたいで消費者の閲覧履歴を共有する「サードパーティークッキー」の廃止方針を撤回する。これまで2025年初頭からの段階的廃止を予定していたが、代わりにユーザーが選択できる新たな仕組みを導入する方針へと転換した。広告主側と、消費者保護関係の両立に向けた議論を再燃させる。

Googleのプライバシーサンドボックス部門のアンソニー・チャベス副社長は声明で、「ユーザーの選択肢を増やす新たなアプローチを提案する」と述べた。具体的には、Chromeブラウザに新しい機能を導入し、ユーザーがウェブ閲覧全体に適用される情報に基づいて選択を行えるようにする。この選択はユーザーがいつでも調整できるという。新しい仕組みでは、ユーザーが自身の興味・関心に基づく広告配信を許可するかどうか、より細かく設定できるようになる可能性がある。例えば、特定の分野の広告は許可しつつ、他の分野は制限するといった柔軟な対応を可能にする。

  1. Googleがサードパーティークッキー廃止方針を撤回
  2. ユーザーが選択できる新たな仕組みを導入へ
  3. プライバシー保護と広告効果のバランスが焦点に
  4. 広告業界や規制当局の反応に注目が集まる

サードパーティークッキーとは、ユーザーが直接訪問しているウェブサイト以外のドメインから設置されるクッキーのことを指す。これらは主に広告配信やユーザー行動の追跡に使用され、デジタル広告業界において重要な役割を果たしてきた。

具体的には、ユーザーがあるウェブサイトを訪れた際に、そのサイトに埋め込まれた広告配信サービスや分析ツールなどの第三者のサービスによって設置される。これにより、ユーザーの閲覧履歴や行動パターンを複数のウェブサイトにまたがって追跡することが可能となり、ターゲティング広告の配信や広告効果の測定に活用されてきた。

しかし、このような追跡技術はユーザーのプライバシーに関する懸念を引き起こし、近年では規制当局や消費者からの批判が高まっていた。そのため、GoogleやAppleなどの大手テクノロジー企業は、プライバシー保護強化の一環として、サードパーティークッキーの制限や廃止に向けた取り組みを進めていた。

方針転換の背景には、英国の競争・市場庁(CMA)や広告業界からの強い反発がある。Googleが2020年に当初の廃止計画を発表して以来、プライバシー保護と競争環境の維持の両立に苦心してきた経緯がある。CMAは、Googleが提案していた代替技術「プライバシーサンドボックス」について、競争法上の懸念を示していた。具体的には、Googleの広告プラットフォーム「Google Ad Manager」の強化につながる可能性や、統治体制の不透明さ、Googleが自社データの利用に制限を設けない可能性、ユーザーのプライバシーへの影響評価と同意取得プロセスの不明確さなどが問題視されていた。これらの懸念に対応するため、Googleは今回の方針転換を決断したと見られる。

Googleの今回の方針転換は、サードパーティークッキーを完全に廃止するのではなく、ユーザーの選択に基づいてその使用を管理する新たな手法を模索するものであり、プライバシー保護と広告業界のニーズのバランスを取ろうとしている。

広告業界も、サードパーティークッキーの廃止が広告効果の測定や配信に大きな影響を与えるとして懸念を表明していた。特に問題視されていたのは、個別化された広告配信の困難化、クロスサイトでの行動追跡ができなくなることによる広告効果測定の精度低下、リターゲティング広告の実施が困難になること、そして小規模な広告プラットフォームや出版社への影響などである。これらの課題に対して、業界ではファーストパーティーデータの活用強化や、新たな識別子技術の開発など、様々な対策が検討されていた。

Googleは声明の中で、プライバシーサンドボックスAPIへの投資は継続し、プライバシーと有用性をさらに向上させていくとしている。この技術は、個人を特定せずに関心に基づいた広告を配信することを目指しており、ブラウザー内で消費者の興味・関心を分析し、広告主には集約されたデータのみを提供する。FLoCやTopics APIなど、複数の技術を組み合わせる方法を採用し、オープンソースで開発することで透明性を確保する。また、プライバシー保護の追加機能として、ChromeのシークレットモードにIP保護機能を導入する計画も明らかにした。利用者の匿名性がさらに強化されるという。

方針転換を受けて、広告主や出版社、ウェブ開発者などは対応に追われる。特に、サードパーティークッキーの廃止を見越して代替技術の開発や導入を進めていた企業にとっては、戦略の見直しが必要となる。

消費者保護の世界的な流れは変わるわけではないため、Googleは規制当局や業界と協議を続けながら、プライバシーと広告効果のバランスを取る新たな仕組みの構築を目指す。

今後のポイント
  1. Googleが具体的にどのような選択機能を提供するのか
  2. 新たな仕組みが広告業界やユーザーのプライバシーにどのような影響を与えるのか
  3. 他のブラウザ提供者や広告プラットフォームの反応
  4. 規制当局の動向と今後のデジタル広告規制の方向性

広告業界を牛耳るGoogleが180度方針を転換するため、デジタル広告業界全体に波及するとみられるだけに、注目が集まる。例えば、企業は自社で収集したデータの管理と活用に一層注力することが予想される。また、AIや機械学習を活用した新たな広告技術の開発が加速する可能性もある。

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