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公取委、VISAの日本法人に独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査

namiten

【東京本局 = 社会】公正取引委員会は17日、独占禁止法違反の疑いで、世界最大のクレカブランドVISAの日本法人に立ち入り検査を実施した。同社が信用照会システムを巡り、競合他社のシステム使用を制限していた疑いがある。

VISAは世界的に見てもクレジットカード決済市場において圧倒的なシェアを誇る。日本国内においても、2020年時点で市場シェアの約5割を占めていたとされる。2023年の国内クレカ決済総額が106兆円に達する中、VISAの影響力は計り知れない。

クレジットカード決済の仕組みは複雑だ。VISAブランドのカードは、銀行系や小売系などの各カード会社がVISAとライセンス契約を結び、消費者に発行する。消費者がこのカードを飲食店や小売店などで使用すると、店舗を管理するカード会社を通じて決済が行われる。

この過程で重要な役割を果たすのが信用照会システムである。カードの発行会社と加盟店を管理する会社が異なる場合、決済時に発行会社側に対して、カードの利用限度額や不正利用の可能性について確認を行う必要がある。この照会をシステム化したのが信用照会システムだ。VISAや他の国際ブランド、さらには大手システム会社なども、このシステムを提供している。

今回の問題は、このシステムを巡って発生した。関係者の証言によると、VISAは契約するカード会社に対し、他社の照会システムを使用する場合、カード会社間で支払う「インターチェンジフィー(IRF)」と呼ばれる手数料を通常より高く設定するよう要求した疑いが持たれている。

IRFの料率は本来、カード会社間の交渉で決定されるべきものだ。しかし実際には、交渉コストや国際ブランドとの関係性を考慮し、多くの場合、国際ブランドが定めた標準料率が採用されている。VISAはこの慣行を利用し、カード会社間の契約に条件を付けることで、実質的に自社システムの使用を強制していた可能性がある。

独占禁止法は、寡占的な市場で大きなシェアを持つ事業者が取引先に対し、競合他社との取引を制限する行為を「拘束条件付き取引」として禁止している。VISAの行為は、この規制に該当している可能性がある。

クレジットカード業界を巡っては、これまでもIRFの不透明さが問題視されてきた。公正取引委員会は2022年4月に実態調査結果を発表し、標準料率の開示を求めた。同年11月には、VISAを含む主要3社が料率を公表するに至った。

今回の立ち入り検査は、クレカ市場の競争環境の健全化を目指す動きの一環と見られる。調査の結果次第では、VISAに対して排除措置命令や課徴金納付命令も視野に入る。さらに、米国本社やシンガポール法人も調査対象となる可能性もある。

クレジットカード決済は、現代の経済活動において欠かせないインフラとなっている。その中核を担う企業の一つであるVISAへの調査は、業界全体に大きな影響を与えることは必至だ。公正な競争環境の確保と、消費者利益の保護のバランスをどう取るか。難しい舵取りが求められる。

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