KADOKAWA、動画工房を子会社化 制作会社取り込みIP強化へ

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シリーズ「交差路」では、デジタル経済に関するニュースを詳しくまとめます。

【東京本局 = エンターテインメント】出版大手のKADOKAWAは11日、アニメーション制作スタジオの株式会社動画工房を子会社化すると発表した。KADOKAWAは動画工房の株式を取得し、グループ傘下に収めることで合意に至った。急成長するアニメの制作能力の強化を目指す。

左にKADOKAWAのロゴ、右側に動画工房のロゴがある。
KADOKAWAはアニメ制作会社「動画工房」を買収する

日本動画協会が発表した「アニメ産業レポート2023」によると、日本アニメは海外市場の拡大、映画分野の伸長もあって、2022年の市場規模は2兆9,277億円(前年比6.8%増)だった。2023年は3兆円台に乗せる公算が大きい。

1973年に創業した動画工房は、50年以上の歴史を持つアニメ制作会社だ。『月刊少女野崎くん』や『NEW GAME!』などの人気作品を手がけ、直近では『【推しの子】』が国内外で大きな話題を呼んだ。同社は、魅力的なキャラクター描写と丁寧な作画による世界観の表現が多彩で、アニメファンから高い評価を得ている。

KADOKAWAは2028年3月期までの中期経営計画で、「グローバル・メディアミックス with Technology」を基本戦略に掲げている。この戦略の中核となるのが、多様なIPを安定的に創出し、世界規模で展開することだ。制作ラインの拡充と制作力の強化を通じて、魅力的な作品を継続的に生み出す体制の構築を目指す。

KADOKAWA傘下のアニメ制作会社は既存の5社(ENGI、Studio KADAN、レイジングブル、ベルノックスフィルムズ、キネマシトラス)に加え、動画工房で6社目だ。アニメの制作力を自社グループ内で高めている。

日本アニメの人気は、視聴データからも裏付けられる。米国のコンテンツ調査会社Parrot Analyticsの分析によると、「呪術廻戦」は2023年に「世界で最も求められたテレビ番組」として表彰された。アニメのカテゴリーだけでなく、全テレビ番組の中でのトップという評価だった。

米国市場では日本アニメの需要が急増している。ジャンル別「非英語作品」の需要は、2018年の2割から2023年には4割へと倍増。需要をけん引しているのが、Z世代(13〜22歳)やゼニアル世代(23〜29歳)といった若年層だ。例えば、「進撃の巨人」や「僕のヒーローアカデミア」の視聴者層は、Z世代以下の10代が7割を占めている。日本発コンテンツの消費額は、K-POPが有名な韓国の2倍を超える。昨年も過去最大を記録し、うなぎのぼりの様相を呈している。

コンテンツ事業に力を入れる企業は増えている。SONYグループは5月の説明会で、ゲームや映画、音楽といったIP関連事業を強化する方針を示した。任天堂も、マリオ関連の映画のヒットで収益を底上げした。

アニメ産業の裾野は広く、市場の期待は大きい。2022年の劇場アニメ市場は785億円(前年比130.4%)で過去最高を記録した。また、音楽・ライブエンタテインメント市場も前年比170.4%増の972億円と大幅に伸びている。

動画工房の石黒竜代表取締役は、「KADOKAWAは良き理解者であり、今後も意欲的に作品作りを続けられる環境が整った」とコメントしている。KADOKAWAの菊池剛執行役Chief Anime Officer(CAO)も、「世界中で愛されるアニメスタジオを迎えられたことは幸甚の至り」と述べ、両社の連携強化による魅力的な作品創出への意欲を示した。

一方で、海賊版の被害は甚大だ。アニメの市場規模が3兆円の大台に迫る中で、被害額は計2兆円に上る。KADOKAWAを始めとした出版大手は対策を強めるが、イタチごっこに近い。AI翻訳のスタートアップへの投資も表明しているが、被害の収束の目処は立たない。

翻って音楽市場は、Spotifyを始めとしたサブスクサービスの開始で海賊版を駆逐した。Spotifyが登場した2008年以降、海賊版の被害が徐々に減少し、10年代後半からは00年代の不振が嘘かのように指数関数的な成長を続ける。足元の2021年には、1999年を超えて過去最大規模になった。

KADOKAWAは、買収が連結業績に与える影響は軽微とした。ただ、中長期的には、アニメを核としたIP価値の最大化に寄与する。アニメ業界の再編や大手企業によるコンテンツ制作会社の買収は今後も続く可能性が高い。

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