EU、MetaにDMA違反の疑い 『課金か同意か』の姿勢を問題視
【欧州本局 = スウェーデン支局】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は1日、米Meta(旧Facebook)の広告モデルが巨大IT企業を規制するデジタル市場法(DMA)に違反している疑いがあるとの見解を示した。FacebookとInstagramの利用者に対し、個人データの利用に同意するか、有料プランの課金での利用を選択するかの二者択一を迫る手法が問題視された。
欧州委は、Metaの「課金か同意か」のいずれかを迫るビジネスモデルがDMAの規定に抵触すると指摘。利用者に対し、個人データをより少なく利用する無料の代替サービスを提供していないことや、個人データの活用に関する同意の権利を事実上与えていないことが懸念事項として挙げられた。
- メッセージアプリの相互運用性確保
- ユーザーデータへのビジネスユーザーのアクセス許可
- 広告効果測定ツールの提供
- プラットフォーム外での独自オファーの許可
- プリインストールアプリの削除許可
Metaは昨年11月、EU域内のユーザーに対し、月額料金を支払って広告なしでサービスを利用するか、無料で利用する代わりにパーソナライズド広告の表示に同意するかの選択肢を導入していた。これはEUの規制強化に対応する措置として実施されたものだが、欧州委の判断によれば、この対応では不十分とされた。
欧州委のマルグレーテ・ベステアー上級副委員長(競争政策担当)は声明で「市民が自らのデータをコントロールし、よりパーソナライズされていない広告体験を選べるようにしたい」と述べ、Metaの現行モデルがDMAに準拠していないとの見解を示した。
Metaには反論の機会が与えられる。欧州委は2025年3月までに最終的な結論を出す方針だ。重大な違反が認められれば、Metaに対し年間売上高の最大10%、繰り返し違反した場合は最大20%の制裁金が科される可能性がある。当サイトが課徴金を独自で推定すると、概算で135億ドル(日本円にして2.2兆円)に上る。繰り返し違反した場合に課せられる課徴金は270億ドル(同4.3兆円)だった。Metaの純利益391億ドル(同6.3兆円)まで3割に肉薄する。
先月24日にDMA違反を指摘されたAppleに続き、DMAの全面適用後2例目になる。EUは巨大ITによる個人データの囲い込みが、中小規模の事業者の参入障壁を高めていると懸念しており、デジタル市場における公正な競争環境の整備を目指している。
Metaの広報担当者は「サブスクリプションによる広告なしモデルは欧州の最高裁判所の方針に従っており、DMAにも準拠している」とコメント。欧州委との建設的な対話を通じて調査の早期終結を目指す考えを示した。