EU、AppleにDMA違反を暫定認定 売上高最大10%の課徴金も 振り返りフォーマット
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EU、AppleにDMA違反を暫定認定 売上高最大10%の課徴金も

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シリーズ「交差路」では、デジタル経済に関するニュースについて詳しくまとめます。

【東京総合 = テクノロジー】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は24日、米Appleがデジタル市場法(DMA)に違反したとする暫定的な認定を行った。2024年3月に全面施行されたDMAの初の適用事例となる可能性が高く、巨大テクノロジー企業に対するEUの規制姿勢が一層強まる。

DMAの対象企業とサービス

6社の22サービスが対象

  • Google:8サービス
  • Amazon:2サービス
  • Apple:2サービス
  • Meta:3サービス
  • Microsoft:5サービス
  • TikTok運営:2サービス

DMAは、デジタル市場における公正な競争環境の確保を目的とした法律だ。AppleやGoogleなどの「ゲートキーパー」と呼ばれる巨大プラットフォーム6社22サービスに対して、厳格な義務と禁止事項を課している。具体的には、自社サービスの優遇禁止、ユーザーデータの他社との共有義務、アプリの事前インストール制限など、多岐にわたる規制を設けている。

ゲートキーパーに課せられる義務
  1. メッセージアプリの相互運用性確保
  2. ユーザーデータへのビジネスユーザーのアクセス許可
  3. 広告効果測定ツールの提供
  4. プラットフォーム外での独自オファーの許可
  5. プリインストールアプリの削除許可

今回の暫定認定で欧州委員会が問題視したのは、アップルのApp Store運営方針だ。具体的には以下の3点が指摘された:

  1. アプリ開発者が顧客に対して、App Store以外での購入オプションや価格情報を自由に提供できない点
  2. アプリ内での代替支払い手段の提供を制限している点
  3. アップルが徴収する手数料が「必要な限度を超えている」点

今回指摘されたのは、Appleが長年構築してきた「経済圏モデル(エコシステム)」の根幹に関わる。アップルはiPhoneやiPadなどのハードウェアと、App Storeを中心としたソフトウェア・サービスを緊密に結びつけ、強固なエコシステム(連携)を作り上げ、他社を排除してきた。DMAはこのモデルに大きな変更を迫るものといえる。

欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー上級副委員長は声明で、「AppleのApp Store規則は、アプリ開発者が消費者に代替オファーを自由に案内することを妨げています。これはDMAの核心的な要素に反するものです」と述べた。

Appleは反論し、「過去数カ月にわたり、DMAを遵守するために多くの変更を加えてきました。我々の計画は法律に準拠していると確信しています」とコメントした。

これまでのEUとAppleの対立の歴史を考えると、簡単には決着しない可能性が高い。両者は過去にも、Appleの30%手数料、いわゆるApple税問題や音楽ストリーミングサービスを巡って激しく対立してきた。

DMAの違反が確定した場合、制裁金は世界年間売上高の最大10%に達する可能性がある。Appleの2023年度の売上高は約3832億ドル(約60兆円)であり、潜在的な制裁金は天文学的な額になる可能性がある。

Appleの2023年度売上高と、DMAの制裁金を比較した画像。

Appleだけでなく、他の巨大テック企業もEUの規制強化に対応を迫られている。例えば、Meta(旧Facebook)は最近、EUでの生成AI機能の提供を一時的に見送ると発表した。Alphabet(グーグル)も検索結果での自社サービス優遇を巡り、EUの調査を受けている。

EUの規制姿勢は、世界の規制当局に影響を及ぼし始めている。日本では今月、DMAに類似した「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」の改正案が可決された。この法律は、アプリストア運営企業に対して、アプリ開発者への手数料の開示や、アプリ審査の透明性確保などを義務付けている。

米国でも、司法省がAppleを反トラスト法違反で提訴するなど、規制の動きが加速している。連邦取引委員会(FTC)委員長のリナ・カーン氏は、「EUのDMAは非常に興味深いモデルであり、米国でも参考にすべき」と述べている。

一方で、厳しい規制がイノベーションを阻害する可能性を指摘する声もある。専門家は「過度の規制は、テック企業の革新的なサービス開発を萎縮させる恐れがある」と警告する。実際、Appleは最近、生成AI技術「Apple Intelligence」の欧州での提供を2024年内は見送ると発表した。規制環境の不確実性が理由だという。

EUの規制当局は、消費者の利便性と公正競争のバランスをどう取るかという難しい課題に直面している。DMAの実効性が問われる中、AppleとEUの攻防は今後も続くことが予想される。「この問題は単なる法的争いではなく、デジタル時代における政府と企業の力関係を決定づける重要な転換点となる」(関係者)と指摘する。

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