X、アダルトコンテンツの規制を一転緩和へ 規約変更で
【東京総合 = テクノロジー】X(旧Twitter)が、アダルトコンテンツに関する規制方針を大幅に転換し、事実上の解禁に踏み切る。Xは6月初旬に利用規約を改定し、合意の上で制作・配信されたアダルトコンテンツの投稿を正式に認める新方針を打ち出した。プロフィール画像など一部を除き、ほぼ全面的な解禁になる。
Xはイーロン・マスク氏による買収後、広告収入の低迷などで経営難に陥っており、新たな収益源としてアダルトコンテンツに活路を見出す。過去にはクレジットカード会社や銀行との軋轢(あつれき)を懸念し、アダルトコンテンツの規制を強化する動きも見せていたが、一転して規制緩和に舵を切った形だ。
Xは以前からアダルト関連のコミュニティを数多く抱えていた。しかし、明文化されたルールはなかったため「どこのラインまで許されるかが全く分からず、ヒヤヒヤしながら投稿するしかなかった」(X関係者)。規制緩和を打ち出す一方、対象外となるコンテンツを予め明らかにしておくことでNSFW市場に安心感を与えた形だ。有料のサブスクリプションサービス「X Premium」(旧Twitter Blue)やファンクラブ制度(サブスク課金)の展開を開始して以降、OnlyFansのようなアダルト特化型サービスからクリエイターが流入し、Xがアダルトコンテンツの受け皿になりつつあった。新方針によって、こうした流れが加速する可能性がある。
ただ、違法コンテンツの蔓延などリスクも指摘される。今年1月にはAIで生成されたわいせつな画像がXに大量に投稿され、Xは対応に追われた。かつてTumblrがアダルトコンテンツの全面禁止に動いた際は、利用者が激減した前例もある。
また、VISAやMastercardなどクレジットカード大手各社が、アダルトサイトへの決済を停止する動きを強めており、Patreon、eBay、OnlyFansなども規制に追随せざるを得ない状況だ。日本でもアダルトコンテンツを配信する複数の企業やニコニコ動画などへのクレジットカード決済が制限されるなど、国内外で過剰な”有害コンテンツ狩り”の動きが広がっている。
表現の自由とユーザー保護のバランスをめぐり、プラットフォーム企業の対応が問われる。アダルトコンテンツの規制をめぐってはグレーゾーンも多く、法的にも社会的にも議論が続きそうだ。児童ポルノ対策では各社足並みがそろわない状況が続いており、Meta(旧Facebook)は児童の性的搾取に関する規制に反発して批判を浴びている。
Xの規制緩和の動きは、マスク氏が目指すより自由なネット空間を求める方針に後押しされた面もあるだろう。だが、プラットフォームの健全性をいかに担保するかという問題は依然として残る。