YouTube、BASEと連携 タグ付の有料化・手数料徴収も検討
動画共有プラットフォームの最大手YouTubeは21日、ショッピング機能の強化を発表した。日本のネットショップ作成サービス「BASE」とのショッピング連携に加え、動画へのタグ付けやストア管理機能の拡充により、クリエイターによる商品販売をサポートする。
YouTubeのショッピング機能は、一定の資格要件を満たしたクリエイターが利用できる。自身のチャンネル内にストアを開設し、動画やライブ配信に商品をタグ付けすることで、視聴者は動画を見ながら商品の詳細を確認し、購入することができる。
現在、YouTubeではShopifyやSpreadshop、Springなどの外部ECプラットフォームと連携してショッピング機能を提供しているが、日本発の外部ECであるBASEとの提携で、日本国内のクリエイターにとって利用しやすい環境が整う。BASEは個人やスモールチームに人気のECプラットフォームで、ショップ開設数は210万に上る。少人数のオーナーでもYouTubeを通じて効果的な集客・販促ができるようになり、双方にメリットがある。
外部EC | ショップ開設数 |
BASE | 210万 |
Shopify | 670万 |
Spring | 550万 |
SUZURI | 70万 |
「商品の販売を希望する配信者の選択肢を増やすことで、収益確保の多様化にも寄与したい」とYouTube Japanでショッピング事業を統括する仲田真人氏は話す。現時点ではクリエイターがショッピング機能を無料で利用できるが、21日付の日本経済新聞電子版によると将来的には手数料の設定も検討しているという。
ショッピングに関連する動画の視聴時間は2023年に世界で300億時間を超え、前年比25%増と急成長している。動画コマースの市場拡大を見据え、YouTubeはクリエイターの収益化手段の多様化を図る。
一方のBASEにとっても、YouTubeとの連携は追い風となる。少人数のショップオーナーでも、YouTubeを通じてブランドの世界観を保ったまま集客・販促ができるようになり、売上向上が期待できる。
クリエイターによる商品販売を後押しし、ライブコマースの拡大を狙う。ユーザー獲得や収益化の面で、X(旧Twitter)やTikTokを意識した動きとみられる。
Xは最近、小規模アカウントの注目度を高める施策を打ち出した。固定ツイートをタイムラインで優先表示するアルゴリズム変更により、フォロワーが少ないアカウントでもインプレッションが大幅に増加する。動画投稿にも数秒の広告を挿入し、クリエイターの収益増につなげる方針だ。
さらにXは3月下旬、プロフィールページの広告も収益分配の対象に含められるようにした。従来の投稿に対する広告に加え、分配原資が最大5倍に膨らむ可能性がある。送金機能の実装や独自の銀行・クレジットカード事業の準備も進めており、総合的な収益化基盤の構築を急ぐ。
一方のTikTokは、オンラインショップとの連携や中小企業・小規模インフルエンサーとの関係強化で急成長を遂げてきた。だが米国では、運営企業の中国ByteDanceに対し米事業の売却を迫るTikTok禁止法案が可決された。提訴する構えを見せるTikTokだが、敗訴すれば多額の制裁金や事業売却のリスクを抱える。
YouTubeにとって、XやTikTokの台頭は脅威だ。ユーザー数の伸びは鈍化し、全盛期の勢いを取り戻せていない。ショッピング機能の強化で、ライバルが注力するECやインフルエンサー支援の領域に活路を見出す。
TikTokが米国市場で勢いを失えば、ユーザーの受け皿としてYouTubeが有力視される。XやTikTokに先んじて、クリエイター経済の主導権を握る算段だ。動画×ECの新たな経済圏の覇権を巡り、プラットフォーム間の攻防が一段と激しくなりそうだ。
【東京総合 = テクノロジー】
【本部 = YouTube・X・TikTok兼任コメンテーター】