「iPhone売れなくて大丈夫」 サービス強調で虚勢 Apple、1年ぶり減収減益
Appleは3日、2024年1-3月期の決算を発表した。売上高は前年同期比4%減の907億5300万ドル、純利益は2%減の236億3600万ドルと、4四半期ぶりの減収減益に沈んだ。主力のiPhoneの売上高が10%減の459億6300万ドルと大幅に落ち込むなど不透明だ。iPadも16%減の55億5900万ドル、Macは4%増の74億5100万ドルと低調だった。巨大ITを指すビッグテック(GAFAM)で唯一の減収減益となった。もっとも、市場が想定するほど収益は悪化しなかった。
(予想はファクトセット集計)
予想 | 実績 | |
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売上高(百万ドル) | 90,366 | 90,753 |
営業利益(百万ドル) | 27,698 | 27,900 |
当期利益(百万ドル) | 23,308 | 23,636 |
一株利益(ドル) | 1.505 | 1.530 |
一株配当(ドル) | 0.241 | 0.250 |
中国市場での不振が特に目立った。iPhone販売台数は前年同期比19%減。ファーウェイなど現地メーカーの躍進が、Appleのシェアを奪っている。全体の地域別売上高でみても、アジアは18%減の163億7200万ドルと苦戦が鮮明だ。日本でも13%の売上高減少となった。
渦中、Appleは「サービス」の売上高が238億6700万ドルと過去最高になったと強調。減収減益の要因を「前年の特殊要因が剥落した影響」と弁明しつつ、アプリストアの手数料収入などに支えられたサービス部門の伸びを前面に押し出した。まるで「iPhoneが売れなくても大丈夫」と言わんばかりだ。
ただ、サービス売上の主力は、GoogleがAppleに支払う検索エンジンの初期設定料やアプリストアの高額な手数料収入。この膨大な利益は、規制の「逆風」にさらされている。欧州連合(EU)が3月に、Appleに2900億円の制裁金を課したのは記憶に新しい。同月にはデジタル市場法(DMA)も全面施行した。EUはDMAに基づいた巨大ITへの調査を早くも始めている。違反していると判断されれば最大で全世界売上の20%の課徴金を課す。米国でも司法省がAppleを提訴し、日本でも「日本版DMA」の成立に向け法案が国会に提出されるなど各国の規制当局から集中砲火を喰らった。
AR・VRの成長にも陰りが見える。スマートウォッチ・アクセサリー部門の売上高は9%減の79億1300万ドル。VRヘッドセット「Vision Pro(ビジョン・プロ)」の発売延期や、米国での販売不振が響いた。最近伝わったApple Carの開発停止など、ブームから一回り遅い製品開発が目立つ。かつての「iPhone」のようなまったく新しい製品はどこへ行ったのか。周りを真似することがAppleの良さだったのだろうか。
決算では株主還元の強化も明らかにした。自社株買いの枠を1100億ドル追加し、四半期配当も12年連続で増額すると発表した。4日の株価は一時8%超の上昇となったが、本業の不振をマネーゲームで覆い隠すのは賢明とは言えまい。
iPhoneの「一本足打法」が通用しないフェーズに入るも、Vision Proが新たな柱になり得るかは不透明だ。Appleには未来を見据えた投資こそ急務だろう。虚勢を張るのではなく、次の一手が問われている。
【東京総合 = デジ経(デジタル経済)編集主幹】