Netflix、ユーザー数933万人増 過去最高益を記録も不透明感から株7%下落
【東京総合 = 経済】動画配信最大手のNetflixは日本時間19日朝、2024年1-3月期の決算を発表した。売上高は前年同期比15%増の93億7000万ドル、1株利益は5.28ドルとなり、いずれも市場予想を大きく上回る好決算となった。営業利益率は28.1%(市場予想:25.7%)と前年同期から7ポイント改善し、フリーキャッシュフローは21億4000万ドルとこちらも市場予想を上振れた。
注目されていた有料会員数は933万人増と、市場予想の484万人を大幅に上回った。地域別では、北米で253万人、欧州・中東・アフリカ(EMEA)で292万人、南米で172万人、アジア・太平洋で216万人の加入者が増加。近年課題となっていた北米での会員獲得が予想以上に進んだことが業績を牽引した。
背景にはアカウント共有の取り締まり強化を本格的に開始したことが挙げられる。家族以外との共有を事実上禁じることで、新規加入者を底上げした。オリジナルコンテンツの品揃えも魅力だ。犯罪ドラマ「Griselda」(6,640万視聴)、人気アニメの実写版「Avatar: The Last Airbender」(6,380万視聴)、サバイバルリアリティ番組「Physical 100」シーズン2(920万視聴)など幅広いジャンルで話題作が生まれた。
地域別では、英国発の「Fool Me Once」(9,820万視聴)、「The Gentlemen」(6,100万視聴)が全世界で人気を博した。韓国では「Queen of Tears」(1,420万視聴)、スペインでは「La Casa de Papel」の派生作品「Berlin」シーズン1(5,670万視聴)が高い視聴数を記録。各地域に根差したコンテンツ制作が功を奏している。
ジャンル | 番組名 | 視聴回数 (百万) | 好評だった地域 |
ドラマ | Griselda | 66.4 | 全世界 |
ドラマ | Avatar: The Last Airbender | 63.8 | 全世界 |
ドラマ | Fool Me Once | 98.2 | 英国発・全世界 |
ドラマ | The Gentlemen | 61.0 | 英国発・全世界 |
ドラマ | Berlin (Season 1) | 56.7 | スペイン |
リアリティ | Love Is Blind (Season 6) | 20.0 | 全世界 |
コメディ | Ricky Gervais: Armageddon | 12.7 | 英国発・全世界 |
ドラマ | Queen of Tears | 14.2 | 韓国 |
2024年通期の売上高は13-15%増、営業利益率は25%を見込んでおり、過去最高益の更新が期待される。一方、成長の柱である有料会員数は伸び悩みが鮮明になりつつある。同社は2024年の加入者数が減少に転じる可能性を示唆した。
広告市場の低迷を受け、広告事業の本格的な収益化は2025年以降にずれ込む見通し。先行きへの不透明感から、ネットフリックス株は時間外取引で一時7%安まで落ち込んだ。日本時間8時30分現在、4.8%安の580ドル近辺で推移している。第2四半期の売上高見通しが市場予想に届かなかったことも売り材料となっている。
Netflixはまた、来年1-3月期以降は加入者数と加入者1人当たり売上高(ARPU)の四半期ごとの開示を取りやめ、売上高や利益などの伝統的指標を重視する方針を示した。急成長フェーズの終わるを意識した決定とも受け取られ、長期的な成長力への懸念も浮上している。
シリーズ作品のヒットに依存するコンテンツ制作や、複数の競合との加入者獲得競争など、ネットフリックスには依然として克服すべき課題が山積している。広告事業の育成を含む次の成長ドライバーを確保できるかが、今後の株価動向を左右しそうだ。