ローソン、ファミマと相互に商品輸送 まずは東北、拡大視野に
【東京総合 = 経済、社会】コンビニエンスストア大手のローソンが、同業のファミリーマートと東北地方の一部地域で商品の相互輸送を始める。日本経済新聞が8日報じ、その後両社が公式に発表した。11日から両社の冷凍食品を同じトラックに載せて配送する。深刻化する人手不足とコスト増に直面するコンビニ業界で、ライバル同士の協業という異例の取り組みが始まる。規制が強化される「2024年問題」が差し迫るなか、物流の効率化に向けた各社の動きは加速しそうだ。
ローソンとファミリーマートによると、共同輸送を行うのは宮城県と岩手県の両社物流拠点から、秋田県の配送拠点へ向かう区間。冷凍食品の輸送で、どちらかの企業のトラックに空きスペースがある場合、もう一方の荷物を混載する。実施するのは火曜、木曜、金曜の週3日。輸送能力を最大限に活用することで、1回あたり約120キロの走行距離に相当する56キロのCO2排出量削減効果が見込めるという。
コンビニ業界では、トラックドライバーの人手不足に加え、ガソリン価格高騰などを背景とした輸送コストの増加が経営を圧迫している。さらに2024年4月からは、トラックドライバーの時間外労働規制がさらに強化される「2024年問題」への対応も迫られている。これまでローソン、ファミリーマート、セブン-イレブン・ジャパンによる共同配送の実証実験などが行われてきたものの、本格的な協業は実現していなかった。
そうしたなか、今回のローソンとファミリーマートの取り組みは画期的だ。両社は「物流課題の解決に向けて、同業他社との協働が重要との認識で一致した」としている。具体的にはこれまで個別に運用してきた配送網について、拠点の位置関係などを精査。その結果、一部区間で共同輸送が可能と判断した。
ローソンはこれまでも、AIを活用した配送ルートの最適化や、配送センターの統廃合などを進めてきた。今月からは夜間営業する店舗への配送トラックを活用し、昼間に宅配食事サービス「ワタミの宅食」の食事を営業所に届ける取り組みも始めた。異業種との協業を含めたあらゆる合理化策を講じる。
一方、セブン-イレブンも、物流効率化に向けた取り組みを強化している。3社とも、共同輸送が解禁された一部特例区間での実証実験も実施。将来的な全面解禁も見据えた動きを活発化させている。ただ、それぞれが独自の物流網を築き上げてきたこともあり、全面的な協業には多くの調整が必要となる。
2024年問題を前にコンビニ業界は再編が進む。セブンは祖業のヨーカ堂の事業縮小に踏み切り、コンビニ事業に力を注ぐ。ローソンはKDDIによるTOB(株式公開買い付け)で上場廃止になる見通しだ。イオンも、傘下のミニストップの本格出店を再開し、競争力を高める。コンビニ業界の協力が2024年問題が迫るなかでの動向が注目される。