日銀、大規模緩和を終了 マイナス金利を解除、YCCも撤廃
【東京総合 = 経済】日本銀行は18日から19日にかけて開いた金融政策決定会合で、長年続けてきた大規模な金融緩和の枠組みを大きく見直すことを決定した。短期金利の指標となる無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を、現行のマイナス0.1%からプラス0.1%に引き上げ、事実上ゼロ%金利政策に転換する。長期金利を一定の範囲内に抑え込む「イールドカーブ・コントロール(YCC)」も取りやめ、金利は市場実勢に委ねる方針だ。17年ぶりの利上げで、日銀の緩和政策は転換点を迎えることになる。
日銀は物価目標2%の「持続的・安定的な実現」が見通せる状況になったと判断。企業業績の改善を受けた賃上げの進展や、サービス価格の上昇を根拠に挙げた。今年の春闘では賃上げ率が1次集計時点で前年の3.80%から5.28%に大幅に上昇。物価上昇を上回る賃上げが実現し、賃金と物価の好循環が強まっていることが確認された。
金融緩和の出口に向けた動きは、国内外の金融市場に大きな影響を与えそうだ。長期金利の上昇により、企業の資金調達コストは上昇する可能性がある。ただ急激な金利上昇を避けるため、日銀は当面、長期国債の買い入れを継続。市場の混乱を最小限に抑える考えだ。
為替市場では、発表を受けて円が大幅に下落した。ドル/円相場は一時1ドル=149円90銭と、前日比0.58円の円安ドル高水準をつけた。日銀のマイナス金利解除は市場で既に織り込んでいたとの見方があった。
日銀の金融政策の転換は、日本経済の正常化に向けた大きな一歩だ。金融緩和に伴う副作用が指摘される中、いつまでも緩和を続けるわけにはいかない。物価2%目標へのコミットメントを維持しつつ、金融政策の正常化を進めることが日銀に求められている。2月22日に日経平均株価が1990年以来の高値を更新したことも、金融引き締めへの転換を後押しした。
世界的なインフレ圧力はいまだ根強く、日本経済の先行きには不透明感が漂う。拙速な金融引き締めは景気の腰折れにつながりかねない。物価と景気のバランスを取りながら、慎重に正常化を進めることが肝要だ。日銀の舵取りの巧拙が問われる局面に入った。