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YouTube、反転攻勢本格化 囲い込みじわり

namiten

【東京総合 = テクノロジー】
YouTubeがユーザーの囲い込みを本格化させている。21日までにライブや通常の横動画を次々に見れる新機能を導入したほか、YouTube Premium向けに軽量ゲームの提供を開始した。同ユーザー向けにはメンバーシップ1ヶ月無料の期間限定特典を用意するなど、鈍化傾向にあるアプリ使用時間を再成長させるための施策を次々と打ち出す。

YouTubeは近年、アプリ使用時間の「限界」に苦しんできた。ユーザー当たりの使用時間の伸びが鈍化すれば、増え続ける投稿者に追いつけず、視聴回数の低下や収入低下を招きかねない。すでに著名YouTuberからそのような報告が上がっている。「オワコン」という言葉も日常的に耳にするようになった。

最も大きな原因として挙げられるのがTikTokやInstagramの台頭だ。数年前までメインターゲットは20代〜30代だったが、現在は30代が主になっている。新たなサービスの台頭や高齢化で、YouTube一強の時代は崩れたと言える。

一方で、十数年トップの座に君臨してきた王のプライドは計り知れない。「負けられない」プレッシャーを背負うYouTubeの反転攻勢が始まった。

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Shortsで伸びた滞在時間

YouTubeがこの1ヶ月間で展開した新機能の旗艦サービスとして位置付けられているのが「YouTube Shorts」だ。そのYouTube Shortsも導入から2年半で大きく環境を変えた。

2019年から2020年にかけて、TikTokやInstagramは、次々にスクロールして動画を見れる「縦型」機能を導入していた。限られた時間内で多くの情報を入手したい、「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する若者の需要を取り込むことに成功し、急成長を遂げた。

商品を紹介する「レビュー動画」にも変化が起きた。YouTubeとブログの2強だったこのジャンルにTikTokが乗り込んできたのだ。TikTokアフィリエイトで、ユーザーがアプリ内から商品リンクに飛ぶことでインフルエンサーに一部が還流される仕組み。短い時間で商品の魅力を一方通行で伝えるため、ユーザーの判断能力を鈍らせることができた。

この施策が功を奏したのか、TikTok出身のインフルエンサーがYouTubeに流れる逆輸入現象も今となっては一般的になった。

これに対抗するためYouTubeはShortsを発表した。競合には一歩遅れる形で、2021年7月に日本にやってきた。言えばTikTokのパクリだが、YouTubeの機能やGoogleとの連携を組み合わせて他社との差別化を図った。

Googleを後ろ盾にYouTubeはShortsを前面に押し出す戦略をとった。今ではTikTokの利用者数を上回る規模まで成長する。違法動画がTikTokと比較して少ないことも、意図的にTikTokを避けてきたユーザーの需要に拍車をかけ、今では横動画と並ぶ規模になった。

もっとも、この2年間で課題もあった。スパムアカウントの増大もその一つだ。本編の途中までYouTube Shortsで流し「続きはこちら」というURLとともに他の動画へ誘導する。これ自体は問題なかったが、違法アップロードされた動画や全く違うユーザーが続きの動画と偽ってコメントを投稿することが多くなった。

YouTubeはこの問題に、コメントと概要欄でURL廃止で答えた。一時は混乱が広がったが、自分の関連動画にだけ誘導できるボタンを配置することで、解決した。商品URLも、ボタン型にすることで写真と共に表示されるようにした。URL廃止を逆手に取り、機能を強化した。

静かに加えられたアップデートもある。チャンネル登録のボタンを押すとアニメーションが再生されるようになった。ユーザー体験の向上にはこういった積み重ねも不可欠だろう。

YouTube Premium

YouTube Shortsで無料ユーザーの滞在時間は格段に伸びた。YouTubeは次に、Premiumユーザーを待遇する。

YouTubeが月額1,280円から提供する有料サービス「YouTube Premium」。煩わしい広告を完全に削除でき、同社の音楽ストリーミングサービス「YouTube Music」も付帯する。他にコントロールパネルが使えるなど、便利な機能は多数ある反面、月額1,280円という価格設定には「高い」という声も少なくなった。

しかし、その声を打ち消すかのように、今年の後半、YouTubeは次々に新機能を投下した。まだ試験運用段階ではあるが、YouTubeの動画広告でよく流れる言わばクソゲーをアプリ内で遊べるようにした。

広告でよく見るあのゲームを遊ぶことができる。

クソゲーは広告が非常に多く、1プレイ毎に30秒の動画が流れてくることも珍しくない。クソゲーがクソゲーと言われる所以(ゆえん)である。
しかし、YouTube内でプレイできるクソゲーは、広告が一切表示されない。多くのクソゲーは、程よい難易度で、時間を消費するのに適している。それを広告なしで遊べるとなると、永遠に遊べると言っても過言ではない。発表された初日、筆者は4時間ほどプレイしてしまった。

12月からは、メンバーシップに1ヶ月無料で入会できるようにする(期間限定)。これは、簡単にいうとYouTubeのファンクラブのようなものだ。
自分の好きなインフルエンサーに、定額制で毎月課金する代わりにコメント用の絵文字や限定動画などを閲覧できるようになる。YouTube Premiumのユーザーは12月から1280円までのメンバーシップに1ヶ月無料で入会できるようにした。複数のチャンネルで利用することができる。

広告収入に頼っているYouTubeは、X(旧Twitter)と同じように、有料サービスなど波が少ない収入源を模索している。

敵なしのYouTube

2000年代後半からGoogleが丹精込めて育ててきたネットの卵は、10年で同社の本命「Google」に次ぐ規模に成長した。音楽サービスをはじめ、映画など、動画投稿サービスの枠を超え、さらにはインフルエンサーとの双方向コミュニケーションの実現した。X(旧Twitter)がより先にスーパーアプリ一歩手前まで辿り着いた。

そんなYouTubeも、ユーザのアプリ滞在時間が頭打ちする。YouTube内で活動するユーザーは苦戦した。これ以上伸びることのない使用時間をいかに自分のチャンネルで消費させるかという競争が発生した。注目を集めようと非行に走る人まで出てきた。

コロナ禍で急伸したYouTubeは、一時的な伸びでオワコンにならず、軟着陸できるのか。今年から来年にかけて大きな勝負になりそうだ。

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